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齋藤薫が語るミュシャ

MAQUIA

永遠の様式美、ミュシャの香り世界に浸りきる時、人は香りで美しくなる

永遠の様式美、ミュシャの香り世界に浸りきる時、人は香りで美しくなる

「優れた芸術は全ての人の日常生活の中にあってほしい」ミュシャのこの願いは21世紀の今、ますます現実になろうとしている。ベルエポックの時代に衝撃をもたらしたミュシャのモダンアートは、アールヌーヴォーの象徴にして今も古めかしさは皆無、どんな時代も新鮮な喜びをもたらすのはなぜなのだろう?

装飾的な縦長の縁取り、デザインされた文字、花鳥風月の描写……おそらくミュシャの画風は美の到達点の1つで、時代がどう変わろうと生き続ける様式美そのものであるからなのだ。しかも全ての作品に共通する官能性は、それ自体が香り高く匂い立つよう。香水となるのは必然だったのだ。

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そしてこの「四つの花」の連作は、無垢なのに一筋縄ではいかないローズ、主役なのに抱擁力を持つカーネーション、心洗い幸福感で包むリリー、妖艶に人を酔わせて癒すアイリス……と、女性が持つべき魅力を四季折々の花になぞらえていて、4つの香調には全く迷いを感じない。そのせいか、“あの時”や“あの人”や夢や憧れ、出会いや別れを思い出させる「プルースト現象」がとりわけ鮮やか、それもこれらの香りが生来の傑作である証だ。

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さあ、生まれるべくして生まれたミュシャの耽美的な香りの世界に浸りきる幸せを知ってほしい。それは人が香りで美しくなる絶対美の扉であることに気づくはずだから。

引用:MAQUIA ONLINEより
https://maquia.hpplus.jp/special/mucha2311/

PROFILE

齋藤 薫 / 美容ジャーナリスト

女性誌編集者を経て美容ジャーナリストに。コスメ、そして私たちを取り巻く美や社会の有り様を、鋭く切り取る。